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会話作文~バレンタインの裏事情~
2010-02-12 Fri 19:55
こちらの作文は『月刊暴君』のバレンタイン企画の作文の裏話?になってます。
どっちから読んでいただいても大丈夫ですが
どちらかといえば『月刊暴君』の方を先に読まれた方が・・・
ちょっとは甘く感じていただけると思います。

お暇でしたら・・・どうぞ。


特別は簡単



バレンタイン当日の朝、宗一は妹かなこからの電話で起こされた。

『兄さん、バレンタインのチョコレート、今年は貰えた?』
「・・・は?」
『今年はバレンタイン日曜だから大学で貰ってくるなら昨日でしょ。で? どうだった?』
「そんなもん、貰ってくるか」
『え~っ?? 今年も収穫ゼロ~?』
「収穫ってお前な・・・」
『宗一兄さんはホントに役に立たないな~。あの巴兄さんだって高校の時はいくつか貰ってきてたのにさ』
「チョコなんて、食いたいなら自分で買えばいいだろうが」
『もう、そーゆーことじゃないんだよっ。あ~、兄さんに期待したかなこがバカだった』
「・・・」

『バレンタインの時くらい兄さんがいるって優越感に浸りたいじゃん』
「なんだ、そりゃ?」
『あ~あ、高級チョコのお裾わけを期待してたのにな~』
「・・・悪かったな」
『そうだ! 森永さんは? 森永さんならいくつか貰って・・・』
「あいつは昨日から学校の用事で出かけてるぞ。帰ってくるのは明日だ」
『な~んだ。森永さんの方もダメかあ』
「・・・お前、森永にもタカるつもりだったのかよ?」
『別に。兄さんが貰ってきてくれればそんなこと思わなかったよ』
「・・・」

妹の容赦ない“口撃”に役立たずと言われた兄は何も言い返せない。
『まあ、でも』
呆れたような、でも少しだけ優しげな口調で妹は続けた。

『兄さんも森永さんも他の人から貰ってないんだったら・・・合格点かな』

「はあ?」
『森永さん大変だね。今日は帰って来れないの?』
「ああ。夜までかかりそうだから泊ってくるらしい。その方が楽だろうしな」
『そっか』
「?」
『そうだ。兄さん、森永さんが帰ってきたらあったかい飲み物でも淹れて少しは気遣ってあげなよ』
「は?」
『森永さんにはいつも色々お世話になってるんだし、森永さんが疲れて帰って来た時くらい兄さんが動いてあげなきゃ』
「・・・」
『ココア! ココア淹れてあげて! 疲れてるときには甘いものがいいっていうしココアは体にいい成分がいっぱいだからピッタリじゃない?』
「なんでオレが・・・第一、あいつはコーヒー党だぞ」
『だから、疲れてる時だから特別なんでしょ』
「ココアなんてもん、うちにはない」
『もう!兄さんが買ってくるの!どうせ一人で暇してるんでしょ?ココアなんてどこでも売ってるんだから』
「・・・別に、そこまでしなくても」
『いいからかなこの言う通りにして!』

『「今日だけ特別だぞ」って言えばいいんだよ』
「え?」
『そう言っとけば、これから先、兄さんが淹れなきゃいけないことにはなんないでしょ・・・まあ、かなこはそーした方がいいと思ってるけど』
「今日だけ・・・か」
『そう。疲れてるから特別。たまには森永さんのこと気遣ってあげて。かなこの代わりだって考えていいから』
「・・・わかったよ」
『それじゃあね。森永さんにもよろしく』
「おう」

賑やかな声を残して妹は電話を切った。
ふと、外出先で動き回っている森永のことを考える。
いつでもどこでも気を遣うあいつのことだ、気が付かないうちに神経使ってんだろうな・・・。
「ったくしょーがねーな。散歩がてら見にいってみっか」

夕方、宗一は近所のスーパーに行ってみた。
日曜の夕方だけあって店の中は混雑していた。
赤札の付いたバレンタイン用のチョコが目につく。

一人でここに来たのは初めてかもしれない。
買い物はだいたい森永がしていたし、宗一の買い物にも大抵森永がついて来ていたからだ。

(・・・あいつが色々やってくれてるのは・・・そのくらいはオレも分かってんだよ)

あいつが疲れている時くらいは気遣うべきだよな。
飲み物淹れるくらいなら・・・オレでも出来る!

ココアの陳列してある棚で、その種類の多さに頭を悩ませる宗一。
結局、有名なメーカーのものを買った。
モン○セレクション受賞?・・・とか書いてあるし、名前が一緒だからな。

淹れると決めたらそこは真面目な宗一のこと、帰り道は容器の裏にある“美味しい淹れ方”の説明文を読みながら歩き、家に戻ってすぐに牛乳と砂糖をチェックする。

(よし。全部OKだ)

森永が帰ってくるのは明日。あいつは疲れて帰ってくる・・・。


その夜。
遠慮がちに玄関のドアが開いたかと思うと、帰ってこないはずの同居人が帰って来た。
「・・・帰るのは明日じゃなかったのか」
「会合が予定より早く終わって・・・帰れそうだったから」
「・・・おかえり」
「ただいま(にこっ)」

冬の夜は寒い。
駅から近くないこの家まで、きっと体も冷えたことだろう。
なんとなく森永の顔に疲労の色が見える気がした。
なぜわざわざ帰ってきたのだろう・・・。

「なにか・・・あったかい飲み物でも淹れるか」
「え、そんな、いいですよ、先輩」
「オレのを淹れるついでだ」

ココアの粉に沸かしたてのお湯をそそぎ砂糖を溶かす。
加える牛乳もちゃんとレンジで温めて・・・ココアの温度が下がらないように細心の注意を払った。
普段し慣れないことをしているからか、ココアを淹れるだけなのに宗一は少し緊張してしまう。
そんな自分が不思議で、つい荒々しくマグカップを出してしまった。
「こ、これ飲んで、風呂入って、さっさと寝ちまえっ!」

「先輩、これ・・・」

森永は予想通りの驚き顔をしている。
宗一は心の中で「やった!」と思った。

「あれ? 先輩の分は?」
「オレは・・・さっき歯磨いたから」

あ、そうだ。かなこに言われた台詞を言っとかないとな。

「き、今日だけ特別だ」

(オレがこんなことするのは今日だけだからな!明日からはもうしないからな!)

森永はそのココアを一口味わった。ゆっくり、ゆっくり・・・。
「・・・甘くてあったかい・・・すごく美味しいです、先輩」
「そ、そうか?」

マグカップを両手で包むように持ちながら森永は言葉を続けた。
「・・・先輩、オレ・・・今日は特別な日だから、バレンタインだから少しでも先輩と一緒にいたくて、急いで帰ってきたんです。でも・・・そうじゃなかった」
「え?」
「先輩と一緒にいられるなら、オレにとっては毎日が特別な日です。毎日が正月でクリスマスでバレンタインです」
「何言っ・・・」
「大好きです、先輩・・・」

森永の黒い大きな瞳に宗一が映る。
瞳の中の自分は驚いた表情をしていた。
視線を合わせることに耐えられなくなり、宗一は顔を逸らした。

「オレは・・・特別じゃないがな」
「え?」
「お前と一緒にいるのは、もう普通のことだろ」
「!」
「第一、毎日特別だとか考えてたら気が休まら・・・って、おい、なに泣いてんだよ(焦っ)」
「・・・なんでもないです。ただ・・・すごく嬉しくって」
「??」
「今年のバレンタインのことは・・・オレ絶対忘れません!」
「はぁ?」
「・・・先輩を好きになってよかった、ホントに・・・(涙)」
「だから、なんでそーゆーことになんだよっ。つーか泣くなっ」


特別な毎日。普通に過ごす日々。
違っているようでも同じ。
二人にとって大切な時間には変わりないのだ。
今日も明日もそして明後日も・・・。


おしまい♪



はい!ココアはかなこちゃんからの入れ知恵でした~。
兄さんがホットチョコレートなんて知ってるはずないですもんね(笑)
かなこちゃんが森永くんの1日早い帰宅を予想していたかどうかは不明ですが
エスパー並みの鋭さを持つ彼女なら・・・もしかするかも。
会話が『月刊暴君』のと若干違うのはご愛敬です。

読んで下さって有難うございました~。
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