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会話作文~『月刊恋する暴君バレンタインSP』~
2010-02-12 Fri 11:23
“リリカル”を期待されてる方がいたら本気でごめんなさいっ。
お得意?のドタバタでもなく
なんとも中途半端な出来なのですが

よろしければ・・・どうぞ。



『月刊恋する暴君 6号』 バレンタインSP
~ 特集 バレンタインSS 「バレンタインデーの過ごし方」 ~


ひとりぼっちのバレンタイン


「巽先輩、だいたいこんなところでいいですか?」
「おう、十分だ。助かった」

今日13日の午後から森永は教授のお供で県外に出かけている。
以前から予定されていたため、森永は宗一の当日の手伝いを山口に頼んでいた。
それほど忙しいというわけではなかったが、やはり手があると違うもの。
実験は順調に進みあっという間に終わった。

「森永が戻ってくるのは月曜でしたっけ?」
「ああ。明日の夜も教授たちと食事会があるから泊りだそうだ」
「まあ明日は学校も休みだからチョコは期待できないですもんね。急いで帰ってくる必要もないか」
「明日?」
「そうですよ。バレンタインじゃないですか」
「あ~・・・」
「去年は“逆チョコ”なんてのが流行ったから、結構な数のチョコ買いましたよ、オレ(笑)」
「くだらん・・・」

呆れ顔の宗一を気にすることなく山口は喋り続ける。
「あ、でも森永は毎年義理チョコも断ってるんですよ。知ってました?」
「え?」
山口の意外な言葉に宗一の手が一瞬止まる。
「なんでも“本命がいる”とかで。オレが知ってる限りではあいつが貰ってんの見たことないですね。初めは遠距離の彼女がいて操立ててるのかと思ってたんですけど、そんな様子全然ないんだよなぁ」
「・・・」
「絶対片想いだと思ってるんですけどね。巽先輩、何か聞いてます?」
「・・・いや、オレはなにも・・・」

「そーいや、あいつ今日チョコ買ってたな」
「?」
「森永ですよ。ほら、すぐそこのコンビニで」
「え?」
「昼飯を買いに行った時に見かけましたよ。急いでたみたいだから話しかけなかったけど」

別に誰かにやるつもりじゃないだろうと笑う山口の声が、自分の心臓の音に邪魔されてよく聞きとれない。
(なにやってんだ、あいつ・・・)
意識することでもないのにどんどん顔が熱くなっていくのが分かる。

「それじゃお先に失礼します」
「ああ。土曜なのに悪かったな」
挨拶をして山口は研究室を出ていった。
「オレも帰るか・・・」

帰り道、なんとなく森永がチョコを買ったというコンビニに寄ってみた。
数は随分少なくなっていたが、おしゃれな包装のいかにも特別な雰囲気のチョコが並んでいる。

・・・どんな顔をして買ったんだ?
割と平気でこーゆーことをやるやつだからな、あいつは。
いやいや、さすがにあいつでも少しは照れるか・・・。

無意識に森永のことばかり考えてしまう。
(ちぇっ。あいつが余計なことしやがるから・・・全く)
そこにいない人間に悪態をつきながら、コンビニを出た。

今日、森永は何も言わなかった。
明日も帰らないのに、そのチョコはどうするつもりなんだろうか?

(そういえば外出前に一度家に戻ると言ってたっけ。もしかしたら置手紙とか・・・)
少しだけ急ぎ足になる自分に宗一は気付かない。

置手紙はあった。
でも宗一が想像していたものはそこにはなかった。

『先輩、おかえりなさい。カレーを作っておきましたので温めて食べて下さい。サラダは冷蔵庫にあります。月曜には戻ります。森永』

「・・・外出前にわざわざカレー作っていったのかよ、忙しいくせに」

すっかり冷めてはいるが宗一の好きなビーフカレー。
辛口のいい匂いがした。

「チョコは・・・なんだったんだよ」

宗一宛のチョコはどこにも置かれていなかった。
どうして、森永が買ったチョコを自分にくれるものだと思ったんだろう。
甘いもの好きな森永のこと、本人が食べたいから買ったと考えるのが自然だ。
第一、宗一の甘いもの嫌いを熟知している森永が自分にチョコを買うはずがない・・・。

「・・・今日買ったりするから・・・気になるんだろーが」

思い返せば、去年のバレンタインは森永がどこかで分けてもらった高級チョコをつまみに森永の部屋で飲んだ。
ビールに合わないと文句を言ったらすぐにコンビニにワインを買いに行った森永。
一昨年も研究室で食べた覚えがある。
その前の年も確か二人で・・・。
森永と過ごすバレンタインには必ずチョコがあった。
普段チョコなど食べない自分にとって、それはとても珍しいことなのだと気付く。
「まるで、チョコはお前としか食べてないみたいじゃねーか・・・」

テーブルの上の置手紙を見つめて宗一は呟いた。
「バレンタインに留守するなら・・・チョコだけでも置いてけよ。・・・気が利かねーヤツ」


翌朝、といってももう昼近い時間だったが、宗一は妹からの電話で起こされた。
チョコを貰えたかどうかの確認だと言う妹に、宗一は呆れ声で応える。

『バレンタインの時くらい、兄さんがいるっていう優越感に浸りたいじゃん』
「なんだ、そりゃ」
『いい歳のアニキがいるんだから妹としては高級チョコのお裾分けを期待するでしょ。今年もほんとに収穫ゼロなの?』
「収穫ってお前、・・・そんなに食いたいなら買えばいいだろうが」
『もう、そーゆーことじゃないんだよ。兄さんに期待したかなこがバカだった』

ちょっとは兄の威厳を見せてよね、などと散々説教される形で兄妹の会話は終わった。
妹がちらっと言った台詞が耳に残る。

『まあ、兄さんも森永さんも他の人から貰ってないんだったら合格点かな』

「なにが合格点だ・・・」
チョコのことも同居人のことも今日は思い出したくなかったのに。
宗一は、自分もすっかりバレンタインに毒されていると感じざるを得なかった。
「合格もなにも・・・あいつはずっとチョコ貰ってないんだとさ・・・」


昼食をとり、読書をして、夕方からは買い物がてら散歩をする。
いつもと変わらない日曜を過ごしている、と宗一は思った。
いつもと違うのは、今日がバレンタイン当日で街全体がやけに甘い色で包まれていること。
そして・・・甘えたがりの同居人が隣にいないこと。

(なんだか1日中チョコのことばっかり考えてる気がするぞ? 全部あいつのせいだ・・・)

今日はバレンタイン。
ひとりきりで過ごす、初めてのバレンタイン・・・。


その日の夜。
宗一が就寝前の読書をしていると、玄関のドアのカギを開ける音がした。
静かにドアが開かれる。

「森永? お前・・・帰りは明日じゃなかったのか?」
「あ、先輩。起きてたんだ。会合が予定より早く終わって・・・帰れそうだったから」
「・・・おかえり」
「ただいま(にこっ)」

「外、寒かったんじゃないのか? 風呂沸かし直すから着替えて来い」
「ああ、オレ自分でやりますよ、先輩はもう休・・・」
「いいから。疲れてるだろ」
「・・・すいません」
「腹は? カレーならまだ残ってるけど」
「途中でちょっと食べたんで大丈夫です」
「そうか。あ、カレーありがとな。美味かった」
「・・・よかった」

森永は部屋着に着替えてリビングに戻ってきた。
なんとなくまだ寒そうに見える同居人を、宗一は少しだけ気遣う。
「風呂が温まるまでちょっと時間あるな。・・・あったかい飲み物でも淹れるか」
「え? そんな、いいですよ、先輩」
「オレのを淹れるついでだ」

宗一がキッチンに立つと当然のように会話は途切れた。
沈黙がやけに重く感じる。
その空気を断ち切るように話し始めたのは宗一だった。

「・・・買ったチョコ、どーしたんだ?」
「は?」
「チョコ、買ったんだろ?」
「え、あの・・・?」
「別に・・・いいんだけどな。お前が喰っても誰かにやっても・・・」
「誰かにって・・・もしかして、バレンタインでオレが誰かにチョコあげたとか思ったんですか?」
「・・・いや、だからどーでも・・・」
「なんで先輩がチョコのこと知ってるのか分かりませんけど、まあいっか。内緒にしておくつもりだったんですけど。あのチョコはカレーに入れたんですよ」
「カレーって・・・お前が作ってったコレか?」
「ええ。カレーにチョコ入れるとコクが出るって聞いたことあったから。でも・・・ホントはバレンタインだから先輩にチョコをあげたかった・・・っていうか」
「え?」
「先輩は甘いもの苦手だし、第一オレからのチョコなんて絶対受けとってくれないでしょ。だからカレーに混ぜてみたんです」
「・・・」
「自己満足だってことはよく分かってます。でも・・・先輩が食べてくれたって聞いたら、やっぱり嬉しい」
「もり・・・」
「今日も・・・どうしても今日中に帰ってきたかったんです。オレにとっては特別な日だから、少しでも一緒にいたくて・・・」

森永の優しい視線に気付き、宗一は慌てて顔をそむけた。
心にひっかかっていた何かが森永の一言ですっかり消え去ったように感じた。
それがなんとなく悔しい。

「・・・なんだよ、オレはてっきり・・・」
「? もしかして先輩、チョコ欲しかったの?」
「は? そ、そんなわけね・・・」
「ホントに?(くすっ)」
 
心の中を見透かされた気がして、宗一の顔は急激に熱くなっていく。
やばい。こんな顔を見せたらあいつはまた絶対自分に都合よく考える!!

「こ、これ飲んで、風呂入って、さっさと寝ちまえっ!」

そう言って森永の分のマグカップを荒々しくテーブルに置いた。

「先輩、これ・・・」

宗一が森永のために淹れたのは一杯のココア。
別名ホットチョコレート。

「き、今日だけ特別だ」

カレーにココア。
しっかりと固まっているものではなかったけれど、二人の間で交わされた特別なチョコたち。
来年はもう少し固いものになるだろうか・・・二人の関係も。

ひとりぼっちだったバレンタイン。
残りの時間は二人きりのバレンタイン。
部屋は甘い香りで満たされていた。

fin





お粗末さまでした。
初めての“お題で作文”、文才ないけど精一杯頑張りました!
「ひとりぼっちじゃないじゃんっ!」というツッコミは無しでお願いしますね~(苦笑)
バレンタインなのに甘くなくてごめんなさい。
だからリリカル??? ← 殴っ!!

ちなみにこの話には裏があります。
うちの兄さんの鈍さをなめちゃぁいけませんぜ(笑)
そちらの(ネタばらし?)作文は今晩UPします。
お暇でしたら併せて読んでやって下さい。

読んで下さって有難うございました~。
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この記事のコメント
日和様
このたびは本当にありがとうございます。
とにかく兄さんがすっごく素直で可愛いです。山口君から聞いたその一言で「森永が買ったチョコは俺のもの」ともう2日間も囚われてしまうんですね。身動きとれてないし。森永君が帰ってからちょこまか動き回る姿が可愛くて。本当に素敵なバレンタインです。兄さんが少しずつ自覚するためには1巻しかり、カナダしかり、ひとりぼっちにさせることがポイントですね(笑)
よかったぁ・・このタイトル日和さんが書いて正解です。某Eさんが書いたら恐ろしかった。編集長の采配がうまく行きました(笑)
又・・機会があったら一緒に遊びましょうね。
さて・・一つ連絡でした。うちの「ひとりぼっちのバレンタイン」のアオリを変更していますので一応確認してください。よろしくお願いします!
2010-02-12 Fri 12:07 | URL | えるりーく #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
ええるりーく様

こちらこそリンクして頂き有難うございます。近々私のブログの方にも貼らせていただきますね。
変更したアオリも読みました~。凄く素敵に紹介して下さって・・・有難うございます。
実際読みに来て下さった方の期待を悉く裏切りそうで怖いですよ~(笑)
今回のお題が「ひとりぼっち」だったので、一人にするのは森永くんより兄さんの方が面白いかなと。
それで“兄さんの思い込みの可愛さ”をネタに試行錯誤して書いたんですけどね・・・なんとかなったなか(笑)
えるりーくさんには以前にお伝えしてましたが、元々バレンタイン用に練って?いたものがあったのでそれと繋げてみたんですよ。
よかったらそちらも読んで下さいね。
さあ、これからは読むぞ~。皆さんの素敵(かつアダルティック)なSS、楽しみです。
えるりーくさん、編集作業お疲れ様です。くれぐれも無理なさらないで下さいね。
コメント有難うございました。
2010-02-12 Fri 20:14 | URL | 日和 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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